現在、個人事業主として事業を営んでいる方のうち、今後、法人成りを行うべきか否かについて、一度は検討することと思います。そこで、法人成りを検討している個人事業主の為に、法人成りに必要な手続きをまとめましたので、参考にしていただけると幸いです。

 まず、法人成りとは、個人事業主の方が、会社を設立して、既存事業を引き継いで行っていくことをいいます。この法人成りを行うときは、次のような手続きが必要となります。 

法人成りに必要な手続 

1.会社設立手続

《公証役場》

 定款の認証など

《法務局》

 設立登記の申請など 

2.会社設立後の手続(税務関連)

《税務署》

 法人設立届出書など

《地方公共団体(都道府県税事務所または市区町村役場)》

 法人設立届出書

 上記の各手続きが、必要か否かは、会社の状況により、異なりますので、ご注意ください。

3.事業用の資産・負債の引継手続

 会社の設立登記の手続きが完了したら、個人事業主の方が所有していた資産・負債を新会社に引き継がせる手続きをおこないます。個人事業主の資産・負債のうち、どの資産・負債を会社が引き継ぐかについては、事業主と会社との間で任意に決めることができます。

 なお、個人事業主の資産・負債を引継ぐ際、事業譲渡契約書、財産目録、株主総会議事録などを用意することについても検討しておきましょう。

4.各種契約の名義変更

 引継ぐ財産も含め、様々なものの名義変更が必要になります。以下に名義変更が必要となる主な契約を例示します。

・銀行口座

・事務所や店舗、工場、駐車場などの賃貸借契約

・事業用車両

・電話、電気、水道、ガス、リース契約、保険契約など

・事業用資金の金銭消費貸借契約

・取引先との契約や売掛金の入金先の変更

5.個人事業の廃業手続(税務関連)

 《税務署》

 個人事業の開業・廃業等届出書など

 《地方公共団体(都道府県税事務所または市区町村役場)》

 事業開始(廃止)等申告書 

6.個人事業の確定申告

 個人事業を廃業した場合、廃業した年の事業所得を確定申告する必要があります。最終年度の確定申告も所得税は翌年3月15日、消費税は翌年3月31日までに申告する必要があります。なお、事業税については、廃業後1ヶ月以内に、申告をしなければなりません。ただし、事業主控除の範囲(290万円の月割額)ならば申告・納税の必要はありません。

最後に

 法人成りのメリット・デメリットについても、十分に検討する必要があります。特に、事業用の資産・負債の引継手続や確定申告について、専門的知識を必要としますので、法人成りの検討から実行に至るまで、時間的節約や節税等の観点から、専門家を活用することが有益であると考えられます。